小さい主語でネットを生きるための書き方

こんにちは,とどです。

この記事は番外編です。

で言及いただいたことをもとに,踏み台の仕返しをしたいと思います。また,この記事は下の窪橋さんの寄稿(で生じたぷち炎上)も念頭に置いていますので良ければ一緒にご覧ください。

主語を大きくすることは簡単だ,でも小さい主語で社会を語るやり方を僕たちは習ってない

世の中には「主語の大きい」主張があふれています。女性はどうだ,男性はどうだ,親はどうだ,子はどうだ,団塊はどうだ,ロスジェネはどうだ,ミレニアル世代はどうだ・・・一概には言えないはずの,多様化が進んだはずの現在においても,言論の場は単純化がよろこばれます。炎上もしやすいです。炎上は野次馬を呼びます。

このブログは療養記主体なので,社会について直接語ることは少なく,比較的楽ではあるのです。だからぱれあなさんみたいに社会について語ることの多いブログほど苦労することは少ないと思うのですが,でも,僕も誰かの役にたちたくて書いている部分が多少なりとはあります。このブログの動機は下の記事に書きました。

ブログを書き始めようと思った見本3人
こんにちは,とど(@tsundenai)です。 サイトを公開して1週間が経ち,新年を迎えました。おかげさまで,はてなブックマークというソーシャルネットワークサービスに2つほど記事を拾っていただきまして,公開1週間で約5400PVとまずまずの滑り出しを見せております。とりわけブックマークでお寄せいただいた皆さんのコメントはありがたく拝読させていただいております。 はてブでとりあげていただ...

なのでこの記事では,主語を大きくすることの逆,「小さい主語」で社会という大きい対象を語るために,僕が気をつけていることについて書きたいと思います。世の中を煽るのではなく,自分なりに誠実に書くためにおすすめしたいことをいくつかご紹介しようと思います。

小さい主語で書くために気をつけること4つ

経験(事実)と当為(べき論)を分けて書く

べき論は主語が大きいです。なのでまずは自分の書くことをべき論と事実(経験したことなど)に分けましょう。

仕事を休むのに11ヶ月かかった。休んで良かったと実感するまで3ヶ月かかった。
重度な抑うつ状態で生活に支障がでているような状態のときに,仕事を休むべきでしょうか。多くの普通の人ならば休むべきだという結論にいたることができると思います。そして,多くの抑うつ状態の人は,その決断ができないでいると思います。 心身の健康のために仕事を休むべきかどうか,この「べき論」を論ずるには個々人の経済状況や家庭状況,仕事の状況によっていろいろ悩みのポイントが違うと思います。そして...

上の記事で,僕は「重篤なうつ病患者は仕事を休むべきだ」ということを言いたい,言いたい,言いたいけれど,自分には「自分が休んで良かったな」ということしかわからない。だから,我慢をする。べき論はにおわせるにとどめて,経験した事実を書く。自分が仕事を休んでどうだったか,ということだけを書く。事実から当為(べき論)は導出できないのです。だからごめんなさい,実は小さい主語で社会は本質的に語れないのです。語れないことと語れることをわけること,それが第一歩です。

小さい主語の文章では,べき論は添えるだけ・匂わせるだけでいいのです。それで読者は充分にわかってくれます。抑制的に書けば書くほど,逆に気配が漂う。何を問いたいかをくわしく,くわしく書いておいて,最後の答えだけをかかない。べき論は小さい主語では言えないことだから。そうすることで答えがひしひしと伝わる,そういう書き方ができると良い文章になると思います。

カテゴリ名ではなく,固有名詞で書く

お友達が良いことを実践していたのでご紹介です。

わざわざ大きい主語を使わない。基本的なことですが,意外と我々は大きい主語を使ってしまいがちなことをたかえさんのツイートは教えてくれます。大きい主語は便利です。何も知らない人にも少ない文字数で多くのことを伝えてくれます。「夫」と書けば普通その人が男性であろうこと,同居しているであろうことなど,いくつかの情報を読者が勝手に推論してくれます。でもそこを我慢して,あえて固有名詞で書くことで,要らぬ推論やクソリプをシャットアウトしてくれるはずです。

自分の気持ちの葛藤や変化をなるべく書く

実は,一番小さい主語は「人」じゃなくて「人の気持ち」です。だから,なるべく「自分の気持ち」という登場人物が複数でてくる記事が,小さい主語を目指す上で良い記事だと思います。1つは心の葛藤を書くこと。こういう気持ちとこういう気持ちが自分の中で戦っていた。戦った結果だけでなく,その葛藤の経緯を書いてあげる。これがひとつ。

もうひとつは,気持ちの変化を書くこと。できれば反省が良いと思います。一般的に反省することは難しいことだから,書く価値がある話になる可能性が高いです。自分はこう考えていたけれども,ある出来事があって,こう改めるに至った。変化の前後の対比をつけて2つの気持ちの違いを書いてあげること。これも小さい主語で良い記事を書くコツなのだと思います。

異なる意見は書いてしまう

異なる意見がすぐに思いつく場合は,あえて先取りして言及してしまうことも1つの手段です。どちらかというと,主張を正当化するための言い訳のためではなく,自分の意見が社会の中でどういう位置にあるのかを明らかにするための言及が良いと思います。読者に意見の見取り図を提供することは有益な情報です。そのために最低限の文字数で,他者の考えに言及をして良いと思います。やりすぎると言い訳がましくなって,主たる主張がなんだかわかりづらくなってしまいますけれども,最低限の言及は先にしてしまった方が,クソリプ防止にもなるでしょう。

自分語りは難しいことも覚えておく

語り得ぬ人のために書く

僕のブログは,元々「深刻な問題を抱えている人がその問題をどう解決しているか」を読みたかったというところから出発しています。でも,ある人に,そもそも本当に深刻な問題を抱えている人は社会から淘汰されてしまうので,語りたくても語り得ないのだ,という趣旨のことを言われました。だから深刻な問題について読みたくても読むことはできない。だったら多少マシな状況にある自分が書くことに意義はあるのではないか,そう考えてこのブログを始めました。

世の中にはいろいろな理由で書くことができない人たちがいます。深刻な問題を抱えていなくても,そもそも作文という技術自体,ある程度の訓練が必要です。ビジネス文は仕事で覚えるかもしれませんが,ぱれあなさんの言うところの「自分語り」,個性の表現法は日本では習う機会が少ない類いの文章だと思います。

すぐにバズることよりもGoogle検索キーワードを念頭に書く

巧みに文章を操ることができない人も,グーグルで検索するキーワードは入力してくれます。「仕事 うつ病」みたいなキーワードで来てくれたのをアクセス解析で見て,僕は考えを改めて,仕事について書くことにしました。

当初は仕事を休んだことについて書くつもりはなかったのです。あまりに自分の置かれた立場は幸運だから,人の参考になるようなことではないだろうと思っていました。でも,実際に休むまで11ヶ月かかったことや,休んで良かったと思えるようになるまで3ヶ月かかったことは参考になるかもしれない,そう思ってブログを書きました。

検索キーワードは,誰かが放ってくれたメッセージです。SEO(検索エンジン最適化)も重要ですが,それ以前に,充分に発信できない人と発信することを決めた人との対話の場なのだと思います。

自分語りのための自分にならないように注意する

最後に,継続的な自分語りをする際の難しさについて1つだけ。自分語りは結構ネタ切れするんだと思います。僕はブログを書き始めて1ヶ月ぐらいですが,すでにネタ切れ気味です。自分語りを続けることは,下手をするとプライベートの切り売り芸人になってしまう可能性があります。あるいは主客逆転して,ブログに書くネタのための生活をするということもあり得ます。それが本当に好きならそれでもいいのかもしれませんが,ネタが切れたらブログは止めてもいいのだと思います。小さい主語派は小さく終わる。無数の小さい主語が生まれること期待して,自分は自分の語れることを語って,あとは無理をしない。そんな姿勢で僕は書いています。

実は「鬱と糖尿で詰んだ」というタイトルで僕が問題にしたかったことについては,すでに語ってしまいました。複合疾患の優先順位をどうすればいいのか,という問題です。

鬱と糖尿と仕事のトリレンマ(教育入院その8)
「プロフェッショナル達の働き方のこと(教育入院その7)」の続きです。療養記の目次はこちらから。 「食事療法が第1,運動療法が第2,それらを補助する形で服薬療法がある。」「糖尿病の三大合併症には糖尿病神経障害,糖尿病網膜症,糖尿病腎症がある。」などのことを習い直していくうちに,DVD教材も先生も教えてくれない問題が自分にはあるということを強く自覚するようになった。 仕事をすればストレスが溜ま...
複合疾患・複数疾患についての文献探索
僕はこのブログのタイトルにもあるとおり,うつ病と糖尿病を患っているわけですが,こういう複数疾患ないし複合疾患について医学分野でどういう風に検討されているのかを調べてみました。 基本的に治療ガイドラインは単一疾患に対するエビデンスの蓄積であり,複合疾患に対するエビデンスの蓄積は進められていない。 複合疾患になりやすい疾患として,うつ病などのメンタルヘルスの問題,糖尿病,高血圧...

あとはダイエットが続くことと,ブログを続けることが相互強化になってくれればいいなと思って続けていますが,復職すれば書く頻度はさらに減るでしょう。たまに検索でひっかかって,たまに読んでくれる人がいればそれでいい,そういう考え方もありだと僕は思っています。

以上,小さい主語でのウェブライティングについての番外編でした。小さい主語で書いてくれる人が増えますように。

タイトルとURLをコピーしました