憂鬱じゃないうつ病患者のこと,ご存じですか

こんにちは,とど(@tsundenai)です。

この記事は下の記事の続きです。

うつ病を語る語彙が足らない
こんにちは,とど(@tsundenai)です。 数年間うつ病のことを主治医以外にはろくに話してこなかったのですが,職場にカミングアウトしたことにより,ある程度病気についてのコミュニケーションに備える必要がでてきました。 ところがあれです,ほらあれなんです。うつ病を語るための語彙がないんです。今回はその話を。 慢性化したうつ病は伝えづらい 週に1回の主治医への報告でも 調子...

いろいろブックマークコメントで教えて頂きました。

うつ病を語る語彙が足らない | 鬱と糖尿で詰んだ

「語彙」は「うつ病」や「抑うつ状態」について書かれた文献を読み漁るとか?ただ表現がDSMの診断基準のような型通りになってしまうかも?このうつ病学会のが決定版です→ http://www.secretariat.ne.jp/jsmd/mood_disorder/img/160731.pdf

2018/12/31 19:50

うつ病の治療ガイドラインを読んだことで,少し語彙が増えました。治りにくいうつ病のことを難治性とか治療抵抗性と呼ぶようです。また,僕自身は精神病性の特徴(幻覚とか妄想)がないタイプのうつ病患者であることもわかりました。

さらに勉強になったのは,次のコメントです。

うつ病を語る語彙が足らない | 鬱と糖尿で詰んだ

 

こないだ仕事で初めましての休職中の方とお話した時に逆向きだけど近いことを思った。「当事者研究」の取り組みとも近接しているような感じもある。

2019/01/01 20:48

当事者研究という言葉を知らなかったので,石原考二編(2013)『当事者研究の研究』医学書院の第1章「当事者研究とは」を読んでみました。ウィキペディアの当事者研究の項がよくまとまっているので,詳しくはそちらを参照して欲しいのですが,障害者の人たちが自分自身の障害について「研究する」というスタイルをとることで一種の客観視ができるようになるであるとか,社会から断絶されがちな障害者が公共との繋がりを回復させる試みであるようです。

おもしろいなーと思ったポイントがいくつもあったので中々うまく表現しづらいのですが,1つ傑出して面白かったのはウィキペディアにも記載のある「自己病名」をつけるという作業です。

一般に,何らかの得たいのしれない苦労に対して,医師から病名の診断がつくことで安心する効果があることは知られていると思います。いろいろと苦労してきたあれこれが「実は○○障害だった」というようなことがわかることで,この得体のしれない苦労が自分だけではない,そういう世界との繋がりを取り戻すような,そんな気持ちがあるように思います。このような効果を,「自己病名」はさらに一歩推し進める効果があり,しかも健常な人との建設的なコミュニケーションをとっていく上でも効果的な手法なのではないかと思いました。

そこで,見よう見まねで「自己病名」をつけるとしたら・・・ということでタイトル回収になるのですが,皆さん,うつ病の診断基準において「憂鬱な気分であること」が必須条件ではないと言われたら,やや意外に思われるのではないでしょうか。だって名前が「うつ病」でしょう?

診断基準について勉強したことを数日前に記事にしました。

うつ病の診断基準についての勉強メモ
※うつ病患者による勉強のためのメモです。御自身の判断については医療機関にご相談ください。 こんにちは,とど(@tsundenai)です。 うつ病とはもう10数年の付き合いになるのだけど,あまりうつ病について勉強する気になれませんでした。勉強したところで治るものではないという諦めの気持ちが強かったからなのですけど,最近うつ病を職場にカミングアウトしたことで健常な人とうつ病についてコミュニ...

詳しくは上記をご参照いただきたいのですが,うつ病というのは9つの診断基準のうち5つ以上があてはまる人をうつ病と診断するという診断方法になっていて,「抑うつ気分」はその9つの基準のうちの1つにすぎないのです。

僕の場合,長年にわたる投薬中ということもあって,毎日の生活において抑うつな気分が長く続いてしまって困るということはほとんどありません。まさに現代医学のおかげですが,日頃困るのは,疲れやすいであるとか,日常的な意思決定ができないことがある(お昼のランチで入る店が異常なほどに延々と決心がつかないとか)とか,そういうようなことで,憂鬱感や抑鬱感ではないのです。

なので半分オリジナルな自己病名をつけるとしたら,「憂鬱でないうつ病患者」という状態になります。僕はこの状況をもう何年も過ごしてきたので,もう当たり前のことなのですが,もしかして,今読んでいただいている皆さんには意外なのではないか,直感に反するのではないかと思って書いてみました。

もっとオリジナリティなネーミングが許されるなら「ぎっくり脳」,そんな感じでしょうか。確かにやってしまうと著しく日常生活に不便があるし,1度やらかすと再発がこわい,やっちまったあとでようやく原因がわかる,そんな感じの脳のバグです。けれども,このバグでそれで憂鬱感はないし,もっと直裁にいえば死にたいという気持ちもないのです。

こういううつ病患者の症状がどの程度一般化可能なのかは僕にはわかりません。当事者研究は「半精神医学 quasi-psychiatry」と呼ばれているそうです。現代医学の専門知(9つの診断基準)を否定すること無く,でも,ただの「難治性うつ病」と表現するよりはもう少し豊かなイメージを提供できる,こういう点で自己病名をつけるという作業は非常におもしろい試みなのではないかと思いました。

よーし,まだ詰んでない!

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